世界的な「#MeToo(ミートゥー)」運動をきっかけに、セクシュアルハラスメント(以下セクハラ)に対して、毅然とした声を上げるひとが増えています。
セクハラはなにも女性に限ったことではありません。まさか自分がと思っていても、いつ魔の手が伸びてくるかもしれないのです。
ここでは、「これからも関わる相手だし、言い出しにくい…」と影に隠れがちな、職場におけるセクハラについて考えます。
「セクハラ?」と思ったとき。相談は誰にすればいい?
会社に相談窓口はありますか?あればそこが第一選択肢です。ない場合でも、産業医や人事等に早急に対応を求めましょう。信頼のできる直属の上司でもかまいません。
セクハラは、その性質上、第三者の前で行われるものとは限らず、被害者と加害者しかその事実を知らない場合も多いものです。また、当人の受け取り方がすべてなので、判断に迷って黙っていることも。その結果、容認されたと誤解され、行為がエスカレートする危険もあり得ます。早い段階で毅然とした態度を示す必要があります。
ひとくちに「セクハラ」といっても内容や程度は様々です。誰もがセクハラと認める性的暴行もあれば、体形に対する軽口まで、被害者がそれを「セクハラだ」と思えばイコールセクハラです。「なにもこれくらいで」と、許されるものではないのです。
セクハラ対策で問題を回避しよう。会社としての取り組み
スキャンダルで会社の失うものは、かつてないほど大きくなっています。社会的な信用はもちろんのこと、悪い評判により、優秀な人材が集まりにくくなるという、将来的な不利益も被ることになります。そのため、会社としての対策もかなり考えられてきています。
会社の就業規則には、セクハラについて言及しているものが少なくありません。それはセクハラを許さないという会社の意思の表れです。セクハラガイドラインや相談窓口の設置、eラーニング(e-Learning)を利用しての啓蒙活動等、具体的な対策を講じている会社は多いことでしょう。罰則について明示している場合もあるかもしれません。
セクハラの具体例から考えよう。こんな場合どう対応すれば?
では個人でできることはあるでしょうか。まずはセクハラについての認識をしっかりと持つことが重要です。そのうえで、被害者にも加害者にもならないようにふるまうことが必要となります。加害者は、実際にその行為を行ったひとだけではないのです。
「先輩の男性社員とペアを組んで仕事をしていた新人女性が二人で飲みにと誘われた。回数が続くようになってきたため、さりげなく断りを入れたら、その後、先輩が仕事に非協力的になり、業務がうまくまわらなくなった。二人のチームワークが崩れたことを、周囲の人間から揶揄され、新人は自分の対応に悩み、会社に行こうとすると体調を崩すようになり、出勤できなくなってしまった。」
先輩の男性社員・新人女性・周囲の人間という登場人物がいます。この場合、出勤できなくなるほど悩んでしまった新人が被害者となりますが、では加害者は先輩だけでしょうか。被害者を追い込んでしまった責任は、周囲の人間にはないのでしょうか。
「先輩」の行動からその思考を推測してみましょう。仕事をきっかけに関わるうちに好意を抱き、アプローチをしてみたが、不発に終わった。気まずさから、あるいは腹立ちから、仕事中に無視をしたり相談にのらなかったりした。自分がしたのはその程度のこと、それを新人がここまで気に病むとは思わなかった…。こんな状況、ありそうだとは思いませんか?
「周囲の人間」はどうでしょう。これまで順調に作業をしていた二人が突然ぎくしゃくしだした。以前は飲みにも一緒に行っていたようだし、これはなにかあったな?男女関係か?面白そうだからからかってみようか…。この程度の気持ちではなかったでしょうか。
…自分たちもしかねない。そう思われたかたもいるのでは?前述しましたが、セクハラは受け手の気持ちひとつです。自分がそうは思わなくとも、相手が不快に思ったらそれはセクハラであるという意識を忘れないこと。それが大前提です。
被害者も、自分がされたことを軽視せず、まずは声を上げることです。自分の身に起きたことをそこでとどめておかずに、信頼のできる人に知らせます。もし最初の一人に軽く流されたとしても、そこで諦めず、再度他の人や相談窓口、人事に相談をしてください。必ず誰か、動いてくれるひとがいるはずです。
そして改めて気にしておきたいのが、セクハラの対象となる相手です。主に考えられがちなのは若い女性ですが、対象はそれだけではありません。男性や中堅、ベテランと、男女年代問わず、可能性はゼロではないのです。訴え出た相手がどんなに意外であっても、誠実に聞く耳を持ってほしいと思います。